年末年始から歯がしみる・痛い…それは食べ物や飲み物が原因かもしれません
年末年始、おいしいものをたくさん食べて過ごした方も多いのではないでしょうか。
おせち料理、お雑煮、みかん、お酒、炭酸飲料、甘いお菓子…。普段とは違う食生活が続いて、ふと気づいたら「なんだか歯がしみるようになった」「冷たいものを飲むとキーンとする」ということはありませんか。
こうした症状が出ると、「虫歯かな?」と心配になるかもしれません。もちろん虫歯の可能性もありますが、実はもう一つ、意外と知られていない原因があります。
それが「酸蝕歯(さんしょくし)」です。
この記事では、酸蝕歯とはどういうものか、どんな食べ物や習慣がリスクになるのか、そしてどう向き合っていけばいいのかについてお伝えします。
酸蝕歯とは、歯が「溶けていく」状態のことです
酸蝕歯という言葉は、あまり聞き慣れないかもしれません。
簡単に言うと、酸性の食べ物や飲み物によって、歯の表面(エナメル質)が少しずつ溶けていく状態のことを指します。
虫歯も歯が溶ける病気ですが、虫歯は細菌が出す酸によって起こるもの。一方、酸蝕歯は、食べ物や飲み物に含まれる酸が直接歯を溶かすことで起こります。つまり、原因が異なるのです。
エナメル質は体の中で最も硬い組織ですが、酸には弱いという特徴があります。酸性のものが歯に触れると、表面が一時的に軟らかくなり、少しずつ削れていきます。これが繰り返されることで、歯が薄くなったり、しみやすくなったりするのです。
年末年始の食生活は、酸蝕歯のリスクが高まりやすい
年末年始は、普段とは違う食生活になりがちです。そして、その中には酸性の強いものが意外と多く含まれています。
柑橘類
お正月の定番、みかん。おいしくてつい何個も食べてしまいますよね。でも、柑橘類は酸性が強く、頻繁に食べると歯への負担が大きくなります。グレープフルーツやレモンも同様です。
炭酸飲料
コーラやサイダーなどの炭酸飲料は、酸性度が高い飲み物の代表です。年末年始のパーティーや親戚の集まりで、いつもより多く飲んでいた方もいらっしゃるかもしれません。
お酒(ワイン、チューハイなど)
ワインやチューハイ、サワーなども酸性が強い飲み物です。特に白ワインは、赤ワインよりも酸性度が高いと言われています。
酢の物・ドレッシング
おせち料理には酢を使ったものが多く含まれています。なます、酢だこ、酢れんこんなど。健康に良いイメージのある酢ですが、歯にとっては酸の影響を受けやすい食品です。
スポーツドリンク・栄養ドリンク
年末年始の疲れを癒そうと、栄養ドリンクやスポーツドリンクを飲む機会が増えた方もいるかもしれません。これらも意外と酸性度が高い飲み物です。
こうした食べ物や飲み物が「悪い」というわけではありません。ただ、頻繁に、あるいは長時間にわたって摂取し続けると、歯への影響が出やすくなるということです。
こんな症状があれば、酸蝕歯のサインかもしれません
酸蝕歯は、初期のうちは自覚症状がほとんどありません。気づいたときには、かなり進行しているケースもあります。
以下のような症状に心当たりがあれば、酸蝕歯の可能性を考えてみてもいいかもしれません。
・冷たいもの、熱いものがしみるようになった
・歯の表面がツルツルしすぎている、光沢がありすぎる
・歯が黄色っぽく見えるようになった
・歯の先端が薄くなった、欠けやすくなった
・歯の形が丸みを帯びてきた
・詰め物が目立つようになった(周囲の歯が削れて、詰め物だけ残っている状態)
これらの症状は、虫歯や知覚過敏など他の原因でも起こりうるものです。自分で判断するのは難しいので、「なんか気になるな」と思ったら、一度お口の状態を確認してもらうのが安心です。
酸蝕歯と虫歯は、何が違うのでしょうか
酸蝕歯と虫歯は、どちらも「歯が溶ける」という点では共通していますが、原因やできやすい場所が異なります。
虫歯
口の中にいる細菌が、食べ物の糖分をエサにして酸を作り出し、その酸が歯を溶かします。歯と歯の間や、奥歯の溝など、汚れがたまりやすい場所にできやすいのが特徴です。
酸蝕歯
食べ物や飲み物に含まれる酸が、直接歯を溶かします。細菌は関係なく、酸が触れた部分が広範囲に溶けていくため、歯全体がすり減ったような状態になることがあります。
虫歯は、歯磨きをしっかりすることである程度予防できます。しかし酸蝕歯は、歯磨きだけでは防ぎきれない面があります。食生活や飲み物の習慣が大きく関わってくるからです。
「食べてすぐ歯磨き」は、逆効果になることもあります
酸蝕歯の予防について調べると、「食後すぐに歯磨きをしない方がいい」という情報を目にすることがあるかもしれません。
これは、酸性のものを食べたり飲んだりした直後は、歯の表面が一時的に軟らかくなっているためです。その状態で歯ブラシでゴシゴシ磨くと、軟らかくなったエナメル質を削ってしまう可能性があります。
一般的には、酸性のものを摂取した後は30分程度時間を置いてから歯磨きをするのが良いと言われています。この間に唾液の働きで口の中が中和され、歯の表面も硬さを取り戻します。
ただし、これはあくまで一般的な目安です。すべての方に当てはまるわけではありませんし、状況によっては早めに磨いた方がいいケースもあります。ご自身の生活習慣やお口の状態に合わせて、どうするのがベストかを考えることが大切です。
日常生活でできる、酸蝕歯を防ぐ工夫
酸蝕歯を完全に防ぐことは難しいですが、日常生活の中でリスクを減らす工夫はできます。
酸性の飲み物はダラダラ飲まない
炭酸飲料やスポーツドリンクを、長時間かけて少しずつ飲み続けると、歯が酸にさらされる時間が長くなります。飲むときは時間を決めて、なるべく短時間で飲み切る方が歯への負担は少なくなります。
ストローを使う
酸性の飲み物を飲むときにストローを使うと、歯に直接触れる量を減らすことができます。
水で口をゆすぐ
酸性のものを食べたり飲んだりした後、水で軽く口をゆすぐだけでも、酸を薄める効果が期待できます。
唾液をしっかり出す
唾液には、酸を中和したり、歯の再石灰化を促したりする働きがあります。よく噛んで食べる、水分をこまめに摂るなどして、唾液の分泌を促すことも大切です。
酸性のものばかり続けない
酸性の強い食べ物や飲み物を連続して摂らないように意識するだけでも、歯への負担は軽減できます。
これらはあくまで「予防の工夫」であり、すでに酸蝕歯が進行している場合は、セルフケアだけでは元に戻すことはできません。
一度溶けた歯は、元には戻りません
少し厳しい話になりますが、酸蝕歯によって溶けてしまったエナメル質は、自然に再生することはありません。
ごく初期の段階であれば、唾液の働きや適切なケアによって、それ以上の進行を防ぐことは可能です。しかし、ある程度進行してしまうと、歯が薄くなったり、しみやすくなったり、見た目にも変化が出てきます。
だからこそ、「気になるかも」という段階で早めに状態を確認することが大切です。進行を止めることができれば、歯を大きく削ったり、被せ物をしたりする必要がなくなる可能性も高まります。
当院では、いきなり治療を始めるのではなく、まずはお口の状態を丁寧に確認し、今どういう段階にあるのかをお伝えするところから始めます。その上で、経過観察でいいのか、何かケアを始めた方がいいのか、一緒に考えていきます。
「虫歯じゃないのに歯がしみる」という方へ
歯がしみると、まず「虫歯かな」と思う方が多いと思います。でも、検査をしても虫歯が見つからないというケースは意外とあります。
そんなとき、原因の一つとして考えられるのが酸蝕歯です。また、知覚過敏や歯ぎしり・食いしばりの影響なども考えられます。
原因がわからないまま放置していると、症状が悪化したり、本当に必要な対処が遅れてしまったりすることもあります。
「痛くて我慢できない」というわけではないけれど、「なんとなく気になる」「前よりしみるようになった気がする」。そんな段階でも、相談していただいて大丈夫です。
原因がわかれば、対処法も見えてきます。まずは現状を把握することが、次のステップにつながります。
予防のために通う、という選択肢
酸蝕歯は、痛みが出てから気づくことが多い症状です。でも、痛みが出てからでは、すでにかなり進行しているということでもあります。
定期的にお口の状態をチェックしていれば、「最近ちょっとエナメル質が薄くなってきているな」「この辺りが少し溶け始めているな」といった変化に早く気づくことができます。
歯医者は「痛くなってから行く場所」というイメージがあるかもしれません。でも本当は、「痛くならないために通う場所」でもあるのです。
特に酸蝕歯のような、自分では気づきにくいトラブルほど、定期的なチェックが意味を持ちます。
当院では、クリーニングや検診の際に、酸蝕歯の兆候がないかどうかも確認しています。何か気になることがあれば、その場でお伝えしますし、今すぐ何かしなければいけないわけではない場合は「様子を見ましょう」とお伝えすることもあります。
食生活のことも、遠慮なくご相談ください
酸蝕歯の予防には、食生活の見直しが大きく関わってきます。でも、「何を食べればいいのか」「どう気をつければいいのか」は、人によって生活習慣が違うので、一概には言えません。
当院では、お口の状態を見せていただいた上で、その方の生活に合わせたアドバイスをお伝えするようにしています。「これを食べてはいけない」という制限ではなく、「こういう工夫をすると歯への負担が減りますよ」というご提案です。
好きなものを我慢するのではなく、上手に付き合っていく方法を一緒に考えていきましょう。
年末年始の食生活で、ちょっと歯が気になるようになった方。まずはお気軽にご相談ください。京急線・雑色駅から徒歩4分、大田区・雑色エリアのかかりつけ歯科として、皆さまのお口の健康をサポートしています。














